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「――――。」 彼が何かを口にした。 でも、背を向けた私は何も聞かなくて。 …否、聞き取れなくて。 涙なんか流すもんかと歯を食い縛りながら、走りだす。 もう、戻れない。 わかりきった現実に 少しだけ、動揺しながら。 別れて構わないと言っておきながら 「さよなら」 とは言えなくて。 それを言わなければ、 私たちの関係が終わらない気がして。 振り返ったとしても、彼が見えない場所まで来ても口にはしなかった。 繋ぎ止めておける。 そんな気がしたから。
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