9人が本棚に入れています
本棚に追加
「――――。」
彼が何かを口にした。
でも、背を向けた私は何も聞かなくて。
…否、聞き取れなくて。
涙なんか流すもんかと歯を食い縛りながら、走りだす。
もう、戻れない。
わかりきった現実に
少しだけ、動揺しながら。
別れて構わないと言っておきながら
「さよなら」
とは言えなくて。
それを言わなければ、
私たちの関係が終わらない気がして。
振り返ったとしても、彼が見えない場所まで来ても口にはしなかった。
繋ぎ止めておける。
そんな気がしたから。
最初のコメントを投稿しよう!