大倉さんの憂鬱。

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  「ふ……」 分かってたじゃん、俺。 もし好きな人と付き合えたら……。 なんて、誰もがする、めくるめく妄想は妄想のままで終わってしまうこと。 なのに、それを理解したくない俺が、さっきから居座ってることがとにかく滑稽で笑えた。 「お前大丈夫?」 俺の顔を、友達が再び怪訝な顔をして覗きこむ。 丁度食事を済ませた俺も、ウーロン茶を啜って、イスの背もたれに体重を掛けた。 「何が?」 「1人で笑ってるし。 今日はやたらテンション低いし。 何かあったんかな、と」 「ああ……」 目を伏せ、頭の後ろで腕を組む。 「悩める子羊、とでも言っとく」 「ふーん。 つか、お前のどこが子羊だよ」 「もちろん全体的にでしょ」 「いやいや、子羊に失礼だから」 口角を上げて笑う俺。 友達は眉間にシワを寄せ、笑った。  
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