天才、悩む

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「ひっ」と恐怖から息を呑む声が彼女から聞こえた。 一瞬であっても、突然の驚き、異様な浮遊感、それが彼女を混乱に巻き込んだ。 そのタイミングを見計らい、龍飛はまた彼女の服をむんずと掴み直した。 すると、彼女はさっきまでの態度が嘘のように、静かになる。心なしか、プルプルと震えているような気がしないわけではないが、龍飛は無視をした。 ホントは落としてしまいたかったが………とりあえず、予想通りだ。 そして、次の行動。 その2<改心させる(命令をきかせる)> この場合の行動は簡単。 「じっとしてくれるか?落としかねない。」 そう言うだけ。 それだけで、恐怖に支配された混乱状態の人間は頭が回らなくなのだ。まあ、例外はあるが、心が弱っているヤツ(自殺志願者など)には大概効く。 で、この女子は例外ではなかった。今になってはピクリともしない。 まるで死んだかの……。 ……いや、そんなことないよな。 まさか死んでなんて…… そう思いながら、龍飛は視線を下に向けた。 ……見てはいけない物を見てしまったかも、いや、見たらいけない物ワースト10に必ず入っている物を彼は見てしまった。 それは引っ掻き傷の血で、真っ赤に染まったグログロ状態の片手…ではなく……
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