天才、悩む

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「……だから、このχ=1はこの式の……」 ……両腕を組み、机に突っ伏した状態の龍飛の耳に、数学の先生の言うことが流れ込んできた。 注意して聞いてはいない。 聞く必要がない。 「……天道、この時のこた……」 「最大値 24(χ=7の時) 最小値 5(χ=1の時)」 うつむいたまま、龍飛は答えた。 「……………………」 途中で言葉を遮られ、その上正しい答えを言われた教師は、しばし絶句する。 うつむいていたので、話を聞いていないと思ったのだろう。 「……間違いましたか?」 龍飛は少しだけ頭を上げ、教師を見た。 間違ってはいないという自信のもと。 「……あ~、いや、間違ってない」 「なら、授業を進めてください」 とても冷たく龍飛は言い放った。 だいたいこう言えば後は自然に進む。 「天道の言った通り、これは最大値……」 先生が授業を進め始めたのを確認した後、また、頭を伏せた。 こうしておけば、当てられずにすむ。 後はこのまま、授業が終わるのを待てば良い。 先生だって、変人とは関わりたく無いはずだ。
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