天才、悩む

3/19
前へ
/133ページ
次へ
だが、龍飛が思ったように事は進まなかった。 「天道、どうした。具合でも悪いのか?」 先生が授業を止め、そんなことを言ってきたからだ。 どうやら、この伏せた態勢が気になるのだろう。寝ているように見えるから。 ……さあ、どう答えたものだろうか? そう思いながら、ゆっくりと顔を上げる。 「……はい?」 ……二度聞きした。 それに、渋い顔をした先生は律義ににも答える。 「体調が優れないのか?」 「優れません」 これ以上、授業を受けるのが億劫だったので、そう答えた。 「大丈夫か?」 「ダメです」 すがすがしいほどはっきりと言う。 ついでに、目を半開きで、だるそうな芝居をする。 それに、こう言ってやった。 「……すいません。ちょっと我慢してたんですが……保健室行っていいですか?」 「え?ああ、早く行ってこい」 そのちょっと頓狂調子の言葉を聞くやいなや、龍飛は立ち上がり、ゆっくりと、あまり早くない速度で(だるそうに)教室から出て行った。 さあ、どこに(保健室以外)行こうか……。 そう思いながら…… ーーー
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加