天才、悩む

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一瞬のことだった。 女子生徒が飛び降りる瞬間、龍飛の体は彼女に走り寄った。 そのまま、彼女の制服を握りしめると同時に、フェンスを掴む。 フェンスから『ギシィ』と嫌な音が聞こえたが、そこは無視し、体制を立て直す。 そして、うまくいったことを確認し、龍飛は少し気を抜いた。 少し危なかったかな。 「…………は…して……」 龍飛に掴まれている女子生徒が何かを言ったが、龍飛は無視し引き上げようとした。 どーせ、この場合ろくな事を言うヤツがいないからだ。 そう思いながら、更に腕に力を入れた。 すると、その女子は本当にろくでもない事を言った。 「離して!」「嫌だ」 龍飛は、某アメフト漫画の某キャラ顔負けの反射で彼女の言葉を瞬殺した。 そして、そのまま彼女を引き上げようと… 「離せって、言ってるでしょ!!」 彼女がそう言うのと『ガリッ!』と音と共に龍飛の腕から激痛が走るのは同時だった。 爪を立て引っ掻いてきたのだ。 痛みで一瞬、本当に離してやろうかと思ったが、あえてその気持ちを抑え、さらに彼女の言葉をスルーし、一気に引き上げにかかった。 だが、その時、天才が想像しなかった悲劇が起きる。 『ガシャン!』という音と共に龍飛が持っていた金網が、枠からきれいに外れたのだ。
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