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「んじゃ、おれは行くよ!
もう当分、ここには来ない!
その…ありがとな!ずっと見守っててくれてさ!」
そうして、アイツは何事もなかったように、前を向いて歩き始める。
「……行くってどこへだよ?」
「ははっ、実はわかんねぇ…。
でも、もう少しぐらいは強くなりたいなぁ。
あ、強くても『痛い』ってのは、ちゃんとわかったよ?
けどさ、また母さんみたいにって思うと、やっぱり怖いからさ…。
ま、頑張ってみるよ」
弱々しい言葉と裏腹に、立ち止まりも振り向きもせずにアイツは、前へ、前へ、と歩き続ける。
「だったら、オレが見届けてやるよ」
そう、気付いたら口にしていた。
「へ…?」
「オレは『強い』からな。
お前が弱いからって、どうこうなったりだけはしねぇ。
だから、好きなように足掻いてみせろよ?
見届けてやるよ、最後までな」
そんな理由はただの後付け。
ただオレがコイツをもっと見ていたい。
ただのそんだけ。
きっと、いつかコイツも色んなモンに押し潰されちまうだろう。
きっと、いつかコイツも疲れ果て、擦り減って、諦めちまうんだろう。
きっと、いつかコイツもオレから離れていっちまうだろう。
けど、それでもいい。
その時が来るまでオレは、折れた心を引きずって、それでも前へと進もうとするコイツの背中を見続けたい。
そう、『あたし』も思ったんだ。
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