『 ボトルネック 』

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きらきらの緑色の瓶 魚の形をしていた とても気に入っていた ずうっと 机の上に飾っていた ある日~突然思いついて 手紙を書き 魚の形をした瓶に入れ コルクの栓をした 電車に乗って 海猫の飛び交う海へ… 砂浜から思い切り 海に投げ込み 視界から消えるまで 波の音に身を任せていた 瓶の代わりに 真っ白な貝殻ひとつ お土産にして‥ ‥‥ あれから‥ 幾年の年月が流れただろう 魚の瓶の事など すっかり忘れていた 小さな瓶の 真っ白な貝殻は机の上 彼女が 海へ行きたいとせがむ 僕は 海猫の海へ連れて行った 砂浜に ビーチシートを敷いて 小型ラジオから流れる 山下達郎を聴きながら 二人は寝そべり ぼんやり海を眺めていた 彼女が波打ち際に 何かを見つけ 駆け出して行った 魚の形をした瓶 何か紙切れが入ってるよ 戻ってきてそう言った 僕の微かな記憶が‥ 飛び出してきた あの日の瓶 彼女が中の紙切れを 見たいと言うので 魚の瓶を割ってしまった 何を書いたか覚えていない ‥ 魚の瓶のボトルネックは 今~小さな瓶 真っ白な貝殻の入った その横にある スライドギターに 使っている 彼女の部屋には 額に収まった紙切れが 大切に飾られている 『この瓶を見つけた貴女 貴方…幸せになれます』 紙切れには それだけ書かれていた 彼女に真実は話していない 僕が幸せにすればいい 魚の瓶の魔法を 叶えるために… 僕が幸せにする 僕は 彼女に届ける為に 魚の瓶を海に投げ込んだ そういうことになる 不思議なことは 意外と身近にあるのかも しれないんだな‥と ボトルネックに苦笑い
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