アルバイト探して三十歩

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高校3年生の冬というのは大いに暇だ。暇を二乗しても足りないぐらい暇なのだから、とても暇なのである。 ただしこれは受験生でなく、指定校などでさっさと大学を決めたうえ、前もって通っておく必要のある部活に所属するでもない極々一般的な俺のような人間の場合だ。 一般受験をする友達を遊びに誘うべからず。蹴りとばされるから。 受験生だった人達ごめんなさい。まだ大学受験に至ってない方々は知識の一つとして覚えていてくれ。 さてさて、俺と同じような境遇の人は分かってくれるだろう。 暇だ。暇なのだ。 友達と遊ぶといってもマジに毎日遊ぶわけにもいかず、結果こうして家でゴロゴロする時間が増えるわけである。 見たくもない昼間のトーク番組がつけっぱなしのテレビからペチャクチャ声を発する。冬の寒さを耐え忍ぶべく、毎日コタツに足を突っ込む事しか俺には出来ないのである。 「あでっ!?」 と、頭を蹴られた。 「まったく毎日毎日ダラダラして」 THE・母親。 毎日毎日、勉強するでも運動するでもなく寝転がってれば眉の一つや二つ吊り上げてたくもなるだろう。 「あんたももう大学生になるんだからしっかりしなさい」 母親が一度は言うのではないだろうかいやきっと言う絶対言うよねベスト3に入るんじゃね? 『○○なんだからしっかりしなさい』 「うーん……」 分かっちゃいるさ。グータラはダメな事くらい。 でもやる事無いんだもん。何も無いんだもん。 大学から出る予定の課題もまだ出てない。よってこの時期はやる事がない。つまり何度もいうが――――暇なのだ。 「わかった」 何がわかったのか自分でも不明な一言は、あっさり母親にも見破られたらしい。 「やる事ないならバイトでもしたら? 大学生になったらもうお小遣いも携帯代も払ってあげないからね」 それはマズい。 高校までは(厳密にはまだ高校生だが)学校がバイトを許可していない事もあり、月五千円(携帯代別)のお小遣いで過ごしてきたわけだが、ここでそれが全てゼロとなると非常にマズい。 かくして、俺は大学生活の資金(主に遊ぶ為の費用)の為バイトを探しに家を出るのである。 「……明日探す」 「今行ってきなさい!」 母親に尻を蹴られた。
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