9人が本棚に入れています
本棚に追加
さんざんバカ話をして、呑んだからもちろん彩華のとこで仮眠した。
これもいつものことだ。
朝になると机のところでSAJINが何やらごそごそやっていた。
俺が起きだすのを見ると、にかっと笑う。
「さじん、おはよう!」
いつもはこの後、俺のところへダイブしてくるのだが、今日ははにかんで笑うだけで、傍に来ない。
不思議に思って俺は机を覗き込むと、昨日の貝殻を整理しているようだった。
「あい!」
親指の爪ほどの大きさの、ピンク色の貝が手渡される。
さくら貝?
「さじん、あげます!」
その小さくもろい貝殻は、俺のものになった。
「さて、帰るか」
「あい!」
SAJINがぽんっと俺の腕の中に納まる。
「暇だな」
「あい!暇です!」
ちっとも暇そうじゃないSAJINが応じた。
うん。
でも。
こんな暇なら悪くないかもしれない。
まだ白く弱い朝日が世界を照らし始めていた。
この時、俺はまだ知らない。
俺の机の上の白紙の山に、この後しばらくは暇だとつぶやく暇さえなくなる、と言うことを。
最初のコメントを投稿しよう!