暇だぁ~怪盗さじんのある日

5/10
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
小さな道から、車通りの多い大通りへ抜ける。 車の流れをみる必要はあるが、さっきのような飛び出しでイライラすることはほとんどない。 何となく、かけていたCDを切り、有線に切り替える。 外国のコトバの元気のいい曲があふれ出てくる。 真夏の太陽とそれは似合いな気がして、俺のテンションもヒートアップ。 このまま真っ直ぐ行ったら…、海だな。 俺のアクセルを踏む足は、心持深くなる。 体感出来ないほどのわずかな加速。 それは、運転者にしか気付けないと思ったのだが。 にぱぁ。 俺の気分を読みとるようにSAJINは目をいっぱいに開き笑った。 本当に不思議なやつだ。 「さじん、ドライブってー?」 窓をいっぱいに開け、びゅうびゅう風を受け、外を見たままでSAJINが言う。 「ドライブか…。んー、車で好きなとこへ好きなように走ることだ、うん」 ジェットエンジンとか積んで、すごいスピードで走ったら楽しいかもしれない。 「SAJIN、お前、海行ったことあったっけ?」 「海ってなにー?」 どんどん変わる外の景色に、目を離せないまま言う。 「塩水がいっぱいあるところだ」 「塩水いっぱい??」 「魚やカニもいるぞ」 「お魚!SAJINいっぱい食べます!」 食べる方と勘違いして、嬉しさにうっとりとその白い肌がうっすらと紅色に染まる。 魚は…、泳いでるんだよ。 泳いでる小魚をみた時に、こいつはいったいどんな反応をするんだろう?
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!