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いつの間にやら小袋を持ったSAJINは、その中いっぱいに貝殻を拾っていた。
「さじん~、見て!!」
袋をあけて戦利品を俺に見せる。
……その目の前で、戦利品が動いた。
「!!」
どうやら貝殻と一緒にヤドカリ入りの巻き貝も拾ったらしい。
俺はヤドカリをつまみだした。
ぴゅっと中に引っ込んだヤドカリをSAJINに手渡してやる。
「そいつは中身入りだ。帰してやれ」
「あい!」
SAJINはそぉっとヤドカリを海水へ入れた。
ほどなくヤドカリは周りの様子を確認するようにするすると貝から顔を出し、動き出した。
歩きだすまで、SAJINはその様をじぃっと見つめていた。
ゆっくりヤドカリが歩き出すと、SAJINは手を振った。
「ばいばい」
その手の影に驚いたヤドカリがぴゅっと殻に引っ込む。
わけのわからないSAJINがびっくりして俺を見上げた。
「お前の方が大きいから驚いたんだろ。ヤドカリは大丈夫だから、そろそろ行くぞ」
「あい!SAJIN行きます」
ちょっぴり残念そうに後ろを振り返っていたSAJINだったが、土産物屋に寄った途端、機嫌は一変する。
魚を刺身に実演しているところからは、好奇心と食欲とで動かなくなった。
刺身は、刺身で買ってきて、さばかないからなぁ。
あまりに動かないので、仕方なく出来たての刺身を買ってやる。
適当に乾物もセレクトして土産だかつまみだかわからなくなった。
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