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「あーあ、暇だなぁ」
え?
「彩華、暇なのか?」
「あ?あぁ。お宝戦も一段落したしな。平和じゃないか?」
のんびりメシも食えるし、と彩華はのほほんと笑っていた。
そうか、暇も悪くないかもしれない!
うん、仲間たちと笑いながら暇なら。
不思議な納得をした俺の前に、綺麗なおちょこが並べられた。
俺の土産を見て、やはりセレクトは日本酒だった。
何も言わずに酒を注ぎ、ちらっと上目づかいに俺を見る。
視線が重なって互いに自然と笑みがこぼれた。
にこっといった品のいい笑いではない。
にやっとする、あの感じだ。
まぁ、言葉がないのも悪くない、うん。
「あれー?SAJINの分がないー!」
そりゃそうだ。
これは酒だぞ?
彩華は黙って赤い切り子のグラスをSAJINに持たせた。
そのガラスに、SAJINが見とれる。
「まっかー!」
喜ぶSAJINのグラスに、透明な液体が注がれる。
酒ではない。
しゅわしゅわいってる。
なんだろう?と覗き込む俺に、彩華がちらっと缶を見せる。
スプライト?
俺たちの酒が無色透明だから、わざわざ透明なものを用意したらしい。
周到だなぁ。
細かいところにこだわるよな。
別にオレンジジュースだってSAJINは喜んで飲むだろうに。
だが、俺たちのおちょこを覗き込み、自分のグラスを覗き込み、SAJINが嬉しそうに笑うのを見ると、そのやり方がある意味正しかったのだと俺も納得する。
文句を言わないだろうが、オレンジでも嬉しいのだろうが、『ちがう』ことがさびしいことは、ある。
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