僕の居場所

プロローグ

彼女のその強く儚い目は僕を突き刺すようにジッと見つめ、僕から離れない。

彼女はなぜこんなにも強い目でいられるのだろう。そのナイフのような鋭さを放ち、母のような優しさと温かさに包まれた瞳に、僕は思わず目線を逸らしそうになってしまう。

僕には考えられなかった。
君はなぜ今こんな時にでもそんな強くいられるのだろうか。僕が君ならきっと悲しみと苦しみ、何より恐怖が僕の心の底を鉛のように重くのしかかり、泣くことしか出来ないだろう。

あの頃の死んだ魚の目をして生きていた僕と比べれば、僕は少しはマシになったのかもしれない。でも肝心なところはちっとも変わっていない。

重圧から逃げ出しくなるような弱い心、人に怯えながら生きていた日々、すぐに傷ついたフリして全てから逃げていたあの頃。

僕は何も変わっちゃいない。君のその瞳に放つ強さを前にそのことを思い知らされる。

だけどもう逃げちゃダメなんだ。君が僕の望みを叶えてくれたように、今度は僕が君の望みを叶えてやる番なんだ。