第壱話〈絶望と終焉〉

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「……なんだったんだろう」 無意識に独り言を呟いていた。ブラックアウトした後、何かが起きたような記憶はあるんだが、一体何をしていたのかハッキリと覚えていない。思い出せないのが何か引っかかって、イライラする。 「セイトさん、起きていますか」 ぼんやりと考えている最中に、ドアのノックが聞こえた。 この時間帯に声をかけてくるのは、週代わりで代わるメイドさんの声だ。 この声は月の第二週に来るユキさんの声だ。おしとやかでかき消されてしまいそうな声。第一週にやってくるナツミさんの元気な声と違って、寝起きには最適の声だ。 「は、はい、今すぐ準備しますので大丈夫です」 いつも通り機械的に返した。 時計を見たら七時前だった。いつもなら六時半には起きるのに、今日は少し寝過ごしたみたいだ。 起こしにくる声がメイドのナツミさんからユキさんの声に代わって、気付いた。 今日は月曜日。 一週間の始まりだ。
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