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『俺は、決めたよ』
出勤して来た男は、自分の席に着くなり、隣に座っていた同僚に話しかけた。
「おいおい、何だよ。ダイエットでも始めんのか?」
同僚は、自分の腹を擦りながら、笑って答えた。しかし、男は、溜息を吐く。
『馬鹿。離婚だよ、離婚』
「穏やかじゃないな」
『あぁ、天啓って、ああいう事じゃないかなと、本気で思った』
男は、パソコンを立ち上げ、目線は画面に向けたまま、話を続けた。
『実はな、朝飯を食べた後、茶柱が立っていたんだ』
「縁起良いじゃないか。それで、どうしてそうなる?」
同僚も、上司の目を気にしてか、画面を見たまま話した。
『俺が朝飯の後に飲んだのは、コーヒーなんだよ』
男が、そう口にすると、同僚は、気の抜けた声を出しながら、男を見た。相変わらず、画面を向いているが、目が怒っているのが分かった。
『あの女、マグカップで茶を飲むのは良い。だけどな、洗い方が雑だから、前の茶柱が残ってるんだ。あんなガサツだと思わなかった』
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