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キ、キ、キ、と餓鬼達は耳障りな笑い声をあげる。
甘い香り……。
ひらり ひらり。
――淡雪が空から舞ってくる。
いや、薄紅色の花びらが視界に流れた。
あとからそれは紙吹雪のように。
斑尾は小さく息をのんだ。
桜。
視界を覆い尽くして舞う花びら。
『ほほ……たった二人でここまで来るとは』
桜吹雪と共に潜んでいた者の姿がそこに現れる。
透き通るような白い面をした美しい女だ。
二十歳を少し過ぎたくらいであろうか。
藤という花簪、淡い藤色が混ざった長い髪、
白藤色の打掛(ウチカケ)がよく似合う。
華奢な姿は儚げな印象を見る者に与える。
女は静かに、目を伏せた。
餓鬼達は謎の美女に駆け寄って、「姫様」とはやしている。
『鬼族は一度、憎い陰陽師に滅ぼされた身。再びこの世を手中にする時が来たわ』
次に発した声は、なよやかな外見からは想像できない、呪詛にも似た声音だった。
『鬼姫、やはりあなたでしたか』
斑尾の目にかすかに苦痛に似た光が揺らぐ。
うふふ、と女は小さく笑い声をたてた。
伏せたままの女の瞳に黄金色の輝きが瞬いた!
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