第七抄

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『ギャッ……ギャッ……』 じくじくと、妖気が降り落ち、地中から滲み出し無限に蠢く。 「ちっ、時間の無駄だというのに」 邪魔がしつこい事に対する苛立ち。 また、少年めいた彼の瞳の奥で訝し気なものが揺らめく。 そして彼は、数歩跳び退って、太刀を空へ向かってふりかぶった。 「童子切安綱、破魔の太刀よ。我が呼び声に応えよ――!」 バチッ! 詠唱と共に、落ちるはずのない稲妻が狂の持つ太刀に落ちた。 破魔の太刀に紫電があつまっていく。 稲光だけではなく、風が、気が、彼を中心に駆け抜ける。 バチバチチチッ! ギイイイィィン!! 暴力的なまでに高まった紫紺の雷光。 迸る妖しい太刀を構えて、走り出す。 「散れ」 彼は妖しく美しく笑みを深めた。 『逃ゲロ……!!』 ハッと妖魔達が後ろに跳び下がり空へ跳躍した。 反射的な行動だが、既に遅し。 狂は刀を大きく一振りした。 ドォォォオオン!! 雷が駆け巡る。 薄青く輝き、木々の影が鮮明に浮かび上がる。 轟音と共に放たれた気。 目がくらんで何も見えない。 ただ、魑魅魍魎が輪郭を崩し、跡形もなく消滅したのが分かった。 .
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