フライドチキン

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体育館へと続く通路から少し離れた人気のない場所に、僕はいた。 ドカッ! という音と共に僕は倒れる。 長い付き合いとはいえ、いつまで経ってもこの音には慣れない。 尻餅をついた僕を見下ろす三人の男女。髪型、服装は違えどみんな同じ顔だった。それはまるで祭の出店に並ぶお面のようで不気味だった。 「おいチキン。いい加減理解しろよ。それとも頭も鶏並なのか?」 髪を赤く染め、学ランを着崩した口調の悪い男は、松永。 「なんとか言えよ!」 そう言うと、足を振り上げ僕の顔の横に叩きつけた。 ならもっと優しい対応をして欲しい。 頭の中では、そう思っていても体が萎縮してしまい、いうことを聞いてくれない。 そう、誰も僕のいうことなんか聞かない。僕自身さえ……。 「ぐぅ! や、やめて」 「松、あまりやり過ぎるな」 ほらやっぱり。僕の意見は通らない。 髪を鷲掴みされ無理やり顔を上げられる。 里中。松永とは違いこいつは見るからに優等生だ。文武両道を体現させている。人望もあり、ルックスも良いので彼を嫌うものは少ない。 僕も彼のことは嫌いじゃない。 憎い。 ただそれだけが彼、いや三人に対する感情だ。
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