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松永と里中の行為は全て録音してあるので問題ない。
懸念すべきは清水だ。自覚があるのか知らないが、録音されたやりとりを聞く限り、善意ある人間に思える。
このままでは清水を倒せない。
だから僕は、賭けに出た。
放課後の教室。暑さは相変わらず続いているが、この時間になると若干の秋を感じることができる。
けど僕は藤原なんとかみたいに秋を待っている訳ではない。
ガラッと引き戸を開ける音で、我に返った。
「な、何か用かな」気の弱そうな女子がか細い声で尋ねる。
「うん。だから呼んだんだ、清水さん」
清水の表情が歪んだ。僕が何を企んでいるのかを探ろうとしているみたいだ。
「実は清水さんにお願いがあるんだ」
声を震わせ、目を泳がせる。
「……なにかな?」
いつもの僕になったのことで安心したのか、あからさまな表情は奥へ行ってしまった。
「ま、松永くんと里中くんのことだよ。や、やめさせてくれないかな」
「……え?」
清水の顔に驚きが見えた。
「もう嫌なんだ。清水さんなら二人を止められるでしょ?」
言った瞬間、清水は顔を伏せた。口を手で抑え、肩を震わせている。
やっぱり、そっち側だったか。
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