第一章 お隣の声

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 昨晩、「聴(き)いた声」や、「壁を叩く音」は何だったのか?  自分自身は、はっきり目をさましていると思い込んでいただけで、実際は、眠りにはいる前の幻聴(げんちょう)だったのでしょうか?  それとも、病院の霊安室(れいあんしつ)に安置されているはずの、老婦人の魂魄(こんぱく)が、まだ病室に残っていて、いわゆる騒霊(そうれい・・・さわぐ霊)となって、うめいたり壁をたたいたりしていたのでしょうか?  わたしには、あの夜は、どうしても眠れず、はっきり目をさまして 「お隣からの声や音」  を「聴いていた」という記憶がありました。 「怖い」  とは思いませんでしたが、釈然(しゃくぜん)としない気持ちは残りました。
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