序章

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「またかよ…」 ベッドの中で上半身を起こし 俺はつぶやいた 午前1時を少し回った頃だ この一週間 同じ"夢"を見る 暗闇の中で 暗闇の中に現れる"影"が 俺に話かけてくる 暗闇なのに俺の目には見える影 俺は その事を不思議に思わず 影の話を聴いている その声は どこか懐かしく 温かい母親のようで しかし 父親のように厳しさのある声 思い出せないまま 俺はその声に耳を傾けている 影の声は 「まもなく 災いがくる」 と繰り返すばかり 苛立つ俺は「災いっていったいなんなんだよ? 俺に何が起きるんだ?」と 影に怒鳴る 唯これを繰り返すだけ これが一週間続いている さすがに 精神的に参ってくる 汗を流そうと シャワーを浴びながら 「いったいなんなんだよ? 災いがどうなんだっつぅの?」 と毒づく 風呂から出て 濡れたまま 冷蔵庫から 缶ビールを1本取り 一気に飲み干す ビールが喉に染みる 空いた缶をテーブルに置くと その横にあった 携帯電話のランプが点いていている メールが来ていた 知らないアドレス? 内容は「松御山へ」 「なんだこりゃ?」 俺は呆気に取られた 松御山は 俺の故郷にある山だ 俺が生まれるずっと以前から 石灰岩が取れる為 削られ続けて すでに山の形はない 「なんであんな山に?」 もうわけがわからない どうしたもんか? ベッドに横たわり考えた "夢"と何か関係あるのだろうか? "夢"と"松御山"? 考えれば考えるほどわからなくなる 考えてもラチがあかない 明日松御山に行ってみよう 久しぶりに お袋と家を出てから一言も会話のない クソ親父の顔でも見てやるか と 考えているうちに いつしか意識が無くなっていた
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