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「ふあぁあ。おはよう琴奈」
『あははっ、おはよう翔くん。昨日夜更かししすぎだよ』
鏡の向こうに居る彼女。物心ついたころから、鏡の向こうには大抵彼女が居る。いつからの知り合いなのか、そんなもの互いに分からない。
学説によれば、鏡の向こうの世界【裏鏡】(りきょう)は生まれた瞬間に向こうの世界でも新たな命が生まれるらしい。
ある程度までの大きさの鏡なら向こうの世界の自分の分身と会えるのだ。
それも何故か、必ず……
『ほらっ、速く支度しないと学校に遅刻するよ?』
「お前もパジャマのままじゃねえかよ」
『あっ、えへへっ』
いわば鏡を隔てているだけの双子の存在と言ってもいいぐらいの間柄だ。琴奈の秘密はみーんな知ってるし、俺の秘密も琴奈だけが全部知っている。
「じゃあ母さん、学校行ってくるよ」
「うん、気をしっかりね」
「気をしっかり?」
「ほらほら、速く行きなさい。遅刻するわよ」
母さんの言葉に違和感を覚えたが、些細な事として忘れ去ってしまった。
そんなことより俺は別の楽しみがあった。
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