きっかけ。

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その日は、 私の送別会。 とは言っても、 本体と別会社は同じ社屋にあるので、 物質的な距離でいうとフロアが一階上がるだけだが、 酒好き集団はこういう会を盛大にやりたがる。 この時、 別に今の職場は嫌いでも無いし、 好きでもない。 あえて言うなら、人よりも仕事に未練がある。 飲み会は少ない会費で、 たっぷり飲めるから好き。 そう思っていた。 「村レミはさ、 何かツンとしてるよね。」 いつも言われます。 「そうそう。 仕事中はずっと眉間にシワよってるしさ。」 不細工ですみません。 「でも、村レミの後任大丈夫?」 「大丈夫な訳ないでしょ!? あたし5年働いてたんですよ!!」 突然の怒号に、 周りに居た3人が驚きの眼差しを向けてくる。 居心地が悪くなった私は、 生ぬるくなった焼き鳥をほおばりながら、 5杯目の生ビールに手を伸ばした。 今日は金曜日だから、 そこそこ酔って大丈夫。 そう思いながらビールを呷ろうとした瞬間。 「村レミはいい女っぽいのに尖ってるもんなぁ。」 まだ言うかという勢いで言葉の先に目を向けると、 すぐ傍に加藤が近付いて来ていた。
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