きっかけ。

3/19
前へ
/104ページ
次へ
加藤 洋介。 一言で言うと、好み過ぎて苦手なのだ。 まず、良い匂いがする。 これは匂いフェチの私にはたまらない。 その上、 服のセンスが良くて仕事が出来る。 絶対に性格が悪い。 女にだらしない。 何より、色素の薄い大きな目が、 全てを見透かしそうで質が悪い。 「村レミ飲むなぁ。 何これビールしか飲んでないの? 焼酎は?」 「…。 飲めますけど、 悪酔いするんです。」 「へぇ、 いつも淡々と青白い顔して飲んでるから、 悪酔いしてるイメージとか無いな。」 そう言いながら、 加藤は私の隣に座り込んだ。 総勢20人は居る居酒屋は、 無理に席を変わると鮨詰め状態。 肩が触れ合う状態を気にしながら、 ジョッキで乾杯をすると、 悪い男はこう呟いた。 「村レミはさ、 彼氏どうしてんの?」 ほとんど話をした事も無いのに、 さも本人から聞いたように話になるのが 職場という狭い社会の汚点だと思う。 「残念ながら別れましたよ。」 普通の声音で言ったせいで、 周りの人まで振り向いてしまった。 「そう、 じゃあ、寂しい独り身な訳だ。」 「仕事が忙しいから丁度いいです。」 「ふてくされるなよ。」
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

125人が本棚に入れています
本棚に追加