終わりが始まり。

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彼の言葉に打ちのめされて、 頭が真っ白になっていた。 うつむいたまま眉間にしわを寄せ、 胸をむかつかせるこの想いをどうにか口にしようとするが、 言葉が出てこない。 互いに無言のまま、 少し時間が経っていたと思う。 目の前にある彼の手が、 私の肩に触れようとした時。 「触らないで。」 地を這うような、 低くかすれた声と一緒に涙が出た。 ポタポタと落ちる涙が彼の手にも降り注ぎ、 視界から外れていく。 ハンカチで止まらない涙としゃっくりと鼻水を抑えながら、 私は彼に背を向けた。
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