終わりが始まり。

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私を呼ぶ彼の声は聞こえていたが、 彼から遠ざかろうとする足は止まらなかった。 その姿を見る人達は、 哀愁というか、 可哀想というか、 何と言っていいかと、 一様に困惑した表情で見つめてくる。 成田空港は空の玄関と呼ばれてるくらいですから、 別れの玄関にもなるはずですよ。 たまに居るんじゃないですかこういうの。 出来ることなら、 こういう女を生み出す男を減らして欲しい。 大泣きしながらもくだらない事を考え始めて、 真っ白だった頭が冷静さを取り戻していくのがわかった。 ある程度歩いたところで、 少し後ろを振り返る。 彼がいない事を確かめて、 涙と鼻水を止めて深呼吸をした。 だが、 やっぱり悲しくて涙は出る。 もう一度、 ハンカチで涙を拭いて自分が立っている場所を確認するために辺りを見回した。 とりあえず、 今から私は何をしよう。 電車に乗って、 羽田に向かって、 また飛行機に乗らなければいけない。 家に帰らなくちゃ。 彼も、 帰るんだから。 そう思ったら、 新しい涙が頬をつたった。
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