口に出さなきゃ分からないんです。

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  「あ、ごめん。泣かないで」 彼の言葉に反応し顔を上げると、ちょっとだけ困ったような、でも、嬉しそうな顔をして私を見ていた。 「ちょっと嬉しいんだ」 「…………?」 なにが嬉しいのか全く分からない。 え?なに?私を泣かせて嬉しいの? ものすごいS心を持った人なの……? 色々考えてる内に、なんだか複雑な気持ちになって涙が出てくる。 「あーっ!泣かないで!」 そう言うと親指で、涙を拭って 「嬉しいんだ」 と、またその一言。 「え…?なにが…?」 「初めて、俺に反抗してヤダって言ってくれた。」 「それが……?」 「うん。いつも自分の事を抑えるだろ?」 「……うん」 「それじゃ、お前はつまらないし、俺も合わせてもらうばっかりじゃ、つまらない。いつ反抗するんだろーって、楽しみにしてたわけ」 「反抗したり意見を言っても、嫌ったりしない?」 「なんでそんなんで、嫌いにならなきゃいけないの?口に出してくれた方が、もっと好きになるよ。」 『好き』と言う言葉に反応して、顔が赤くなった。 「でも、今日はもう遅いから帰ろうな。」 「うん。寂しいけど我慢する。」 私の返事に、彼は笑いハンドルを握った。 「ねえねえ」 「なーに?」 「家着くまで、手繋いでたら駄目かな?」 少しハニカミながら手を握る彼に、私もハニカんだ。
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