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「うわー、筆箱忘れたー最悪だわー」
そう大声で言う、私の斜め前の席の彼。
背は170センチぐらい。
少しだけ茶色く染まった髪。
なで肩で頼りなさそうな肩。
目がくりくりしてて、女の子みたいな顔立ち。
私の好きな人。
観察するには、ベストポジションな席。
「なーお前シャーペン貸してくんね?」
「はあ?無理。俺、シャーペン1本しかねーし」
「使えねー」
彼は右隣の子に借りようとしたけど、あっさりと振られた様子。
私に聞いてこないかなあ。
そう思った瞬間、彼が振り向き目が合う。
「ねえ、シャーペン貸して?」
「!」
「あ…無理かな?」
子犬みたいな目で、見つめてくる彼。
やめてくれ。私の心臓は彼の行動1つ1つに、耐えられるほど、丈夫ではない。
「全然大丈夫っ!はいっ!」
真っ赤になりながらシャーペンを渡すと、彼が微笑みながら「ありがとー!」と言った。
不思議だね。
今まで言われたことない言葉じゃないのに。
1日1回は聞く言葉なのに。
好きな彼に言われる『ありがとう』が、すごく特別な言葉に聞こえた。
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