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学校に流れる時間の速度はけっこう速い。
今日もあっという間に放課後だった。
いつもなら荷物をまとめてすぐに家に帰る。
放課後に一緒に語る友達もいないのに、ムダに教室にいる気にはどうしてもなれなかった。
でも今日は週番だ。
まだ帰れない。
「ねぇ日野ーカラオケ行こ!」
「いつ?」
「今日!」
「行かねぇよ。オレ週番だから」
「そんなんいーじゃん。行こうよ」
「行かないって」
日野くんはモテる。
明るくて、笑顔が似合って。
日野くんはみんなを幸せにする人だから、“誰か”のものにはならない。
「ねぇ、樋口さんもいいよね?」
「えっ?」
急に話し掛けられて、何のことかわからない。
ど、どうしよう。
「何で樋口に聞くんだよ。オレが行かないって言ってんの」
助け舟のように日野くんが口を開いた。
優しくて、よく気がつく。
日野くんの“行かない”に、さすがにわたしもカラオケのことかと気付く。
「いいよ。カラオケでしょ?いいよ行って。わたし、日誌書いとくし」
緊張で少し早口になってしまった。
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