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「ごめん、早くやっちゃおう」
日野くんは貸して、とわたしに手を差し出した。
指先が日野くんに触れないように慎重にシャーペンを手の平に置いた。
「…カラオケ、よかったの?行かなくて」
緊張して、汗が出て来る。
「いいよ別に。週番なんだし当たり前でしょ」
日野くんは、放課後はあまり笑わないのかな。
少し冷たい雰囲気。
昼間は太陽みたいなのに、今はちょっと普通の男の子みたい。
「日野くん…少し昼間と感じが違うね」
「…そう?どうだろ、意識してないけど。今はちょっと緊張してるから」
「緊張?」
日野くんの声が好きだ。
透き通ってて、嫌みな感じが含まれてない。
わたしは日誌を書く日野くんを見ながら、そっと目を閉じる。
「オレ樋口に嫌われてんのかと思ってたし」
「どうして?」
嫌いになるわけがない。
日野くんの声をもっと感じたくて、目を閉じたまま会話をする。
「どうしてって樋口あんまオレと喋ってくれないし、実はオレ…って樋口?」
呼ばれて、目を開けると、心配そうな顔の日野くんがいた。
「眠いの…?」
わたしはお決まりの首ふりで返事をして
「日野くんの声、聞いてた」
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