長屋

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「おっす唯!」 ……疲れているんだな。 空耳が聞こえる。 「おーーい! 唯! おはよーー!」 ……さてクラスに向かうか。 「なんで無視するんだよーー! 無視するなよーー(泣)」 …………ちっ。 「悪い、 気づかなかった。 よう、 辰巳」 俺の幻聴は幻聴でなく、 リアル辰巳ボイスだった。泣き出しそうになったから、 しょうがなく構ってやることにした。 ……しょうがなくだ。 「お、 おう! おはようだ! 唯!!」 ……あーー、 面倒くさいな。 「ほら、 行くぞ。 遅刻はごめんだ」 「よし! ……ところで俺の下駄箱はどこだ?」 ……このバカ野郎。 「早くしろ! 遅刻するだろ!」 「……あった! よし、 行くぞ唯!!」 自分の下駄箱の位置を忘れるやつなんて聞いたことないぞ。 ……辰巳の下駄箱の位置、 覚えておくか。 さっきみたいなことがないように。 辰巳の下駄箱を見ていたら…… 「ゆーーい! 遅刻するから先行くぞーー!」 その声は階段の上から聞こえた。 ……ふざけるなよ。 「くそっ! あいつ覚えてろよ!」
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