長屋

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--昼休み-- 「……なあ、 唯」 「ん?」 「パリー・ホッター好きなのか?」 「映画は好きだ。 本は長いから読む気になれないな」 「わかる。 俺もそんな感じ」 我が高校には意外にも食堂が存在する。 その食堂の一角で他愛ないのない会話をしているのは、 無論……俺と辰巳である。 「しかし驚いたよ。 朝からパリー・ホッターの本を五冊抱えて教室に入ってくるなんてさ」 「……バカ野郎。 一番驚いているのは俺だぞ。 少しでも荷物を軽減しようと置き勉してるのに、 逆に増えてどうするんだ。 このイライラは誰に当てればいい」 「階段で理想的な出会いをした相手だろ。 ……俺には当てるなよ。 ロッカー貸してやってるじゃん」 「ふーー。 まあ、 そんなことする気はないけどな」 「で、 あのパリー・ホッターはどうすんの?」 「……放課後に返す予定だ。 てか、 返す」 返さねば俺のロッカーは使えないからな。 「そうか。 手伝ってやろうか?」 「ああ、 よろしく頼む」 「よし! 任せろ!」 何だかんだ言って、 こいつは優しいんだよな。 また少し雑談して昼食を終えた。
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