長屋

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「…………で、 何? 俺に何か用か? 辰巳」 「そうだ! 何か用だ!」 こいつは根岸辰巳(ねぎし たつみ)。 俺の同級生で、 例外がない限り三年間共にいるだろう。 ……共にいなくてはならない。 残念なことに……。 辰巳は神里市で生まれ育った……というよりは、 神里高校に通っている生徒はほとんど神里市民といってもいい。 例外は俺だ。 県を一つ越えて一人暮らしをしている俺。 こいつらは転校生感覚で俺を見ているんだと思う。 新学期は質問の嵐で大変だった……。 その中でも俺に一番興味を示したのが辰巳だった。 そして今では仲良しを越えて、 面倒な存在になっている。 「手短に用件を言え。 手短にな」 「よし。 交通事故にあった」 「知らん」 「二組の岬さんが交通事故に遭ったんだって!」 「知らん」 「どこで交通事故に遭ったと思う?」 「知らん。 ……商店街前の道じゃないのか? 車の通り激しいしな」 「まあそう思うよね! でも残念。 ハズレだ」 「…………」 「気になる?」 「……少しな」 こういう話は嫌いじゃない。 理由は聞くな。
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