22人が本棚に入れています
本棚に追加
「掴まれたから骨折したんだよ」
前から思っていたが……
「……馬鹿かお前は」
「何でだよ!」
「足を掴まれたくらいで骨折だと? その場にプロレスラーか何かいたのか? だったら、 今すぐに警察に言うんだな。 変質者が出ましたって」
「信じてくれないの!? まあ、 俺も始めは疑ったけどさ……」
辰巳の顔が少し曇った風に見えたのは気のせいか?
「疑ったけど……何だよ?」
少しの沈黙が流れた。 俺は辰巳を見ている。 辰巳は下を向いている。 ……この沈黙、 居心地が悪い。 俺は口を開いた--しかし、 それよりも先に俺の目の前のやつの口が動いた。
「…………があったんだ」
俺の目の前のやつ。 当然そいつは辰巳である。 しかし、 何故か口ごもって言ったから聞き取れない。
「……ん? 何があったんだ? はっきり言えよ」
「……手の跡が……手の跡があったらしい」
「……手の跡?」
「岬さんの足には手の跡があったんだってさ……」
辰巳は気味悪そうに俺に言ってきた。
……どうやら本気だな。 ……この話。
「……岬さんは、 どうしているんだ?」
最初のコメントを投稿しよう!