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「さて、君にはここで言っておかなければならないことがある」
「うっひゃあー!?」
突然の背後からの声に驚き、情けない声をあげたかなめ。
「な、ななな何!?」
驚きも冷めやらぬまま、とにかく返事だけをする。
「君は・・・我々の子供ではない」
「え・・・?」
突然の爆弾発言に絶句すると、
「・・・じゃあ、誰の子供なんです?」
どこか諦めきった声で聞いた。
「君は、桃から生まれた・・・そうだな、日本の昔話で言うところの桃太郎だ」
「・・・は? 今なんて・・・?」
「桃太郎だ」
「・・・・・・」
「ここに、桃太郎が着たと言う服を用意した。奥に行って着替えてくるのだ」
「・・・・・・」
かなめは震えていた。しかし、そこはそれ、かなめである。決して泣いているわけではなく、
「ふ・ざ・け・る・なぁっ!」
ただ単に怒りを抑えるために震えていた。
とにかく、怒りに任せて一叫びすると、
「どうして突然と『お前は桃太郎だ』なんて宣告されなきゃいけないわけ!? とんでもなくタチの悪い冗談!? それとも新手のいやがらせ!? そうじゃないなら一体なんだって言うのよ。ん? 一昨日来やがれっ!」
「ふむ。君には単なるいやがらせに聞こえたか。無理もあるまいが・・・受け入れなくてはならない事実だ。そうでないなら、君の中にある今の決意――鬼退治というのはどこから沸き上がってきたのかね?」
一気に捲し立てたかなめに対して、臆することなく冷静に事実を告げるマデューカス。
「そ、それは・・・村の人たちが困っていたから・・・」
「そうか、では具体的にどういったことに対して困っていたのかね?」
「具体的に・・・って、そりゃあやっぱり物を持っていかれたりとか」
「泥棒をする者も同じであろう」
「物を壊されたりとか」
「いたずら好きな者ならば行うであろう」
「あとは・・・」
「それだけか。それだけで他の種族を滅亡に追い込もうというわけか。やはり、桃太郎の血が受け継がれている証拠だろう」
「・・・・・・」
「さて、これだけ言えば自分が桃太郎だと自覚できたかね?」
「・・・まだ完全に認めた訳じゃないけど・・・」
すっかり打ちのめされたかなめは、桃太郎の衣装を手にとると、
「せっかく用意してくれたんだから、着るね」
奥の部屋へと姿を消した。
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