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全てのナイフを研ぎ終えたカリーニンおばあさんは、とにかくその大きな桃を軽々と持ち上げると、自宅へと戻っていった。
「帰還しました」
そう端的に言うと、
「ご苦労。くつろぎたまえ」
とても冷静な声で、おじいさんはそう告げた。
「はっ」
おばあさんは返事をすると、手を後ろで組み、足を肩幅に広げた。いわゆる、1つの“休め”のポーズである。
「さて、カリーニンくん。君に聞きたいことがある。その桃はなにかね?」
「はっ、これはナイフ研ぎの最中に水上から流れてきたものです。殺気を放ってみましたが、とくに反応がないので、単なる桃と判断しました。何か、問題がおありでしょうか」
マデューカスおじいさんは、スッと目を細め、
「君がそういうのであれば、まず桃に間違いはないと思うが、もし食べるとしたら安全性が保証できる代物ではない。処分したまえ」
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