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唐突だがついさっき閃いたことがある。なに、帰宅途中ふと鼻につく匂いに何の香りだろうかと疑問に思う程度の何気無い閃きだ。とるに足らず掃いて捨てるような誰にも思い付く文字通りガキのような発想。
「マンホールをベニヤ板にこっそり変えれば即席の落とし穴の完成じゃね?」
普通の子供はそんなこと考えもしませんね。わかります。
しかしその男、若者にしては珍しく兎のように白い頭髪を持ち、いっさいがっさい冗談ではないとそれなりに目鼻立ちの整ったキリッとした思案顔で「あーでもない、こーでもない」とポニーテールを揺らしながらウンウンと唸っている。
そんな怪しさ満点な男……まぁ、俺な訳だがそれはいいとして。
今、目の前に工事終了後閉じ忘れたのか開きっぱなしのマンホールがあったりする。
普通なら見て見ぬふりをする。またはどこかに通報する。もしくはそっと閉じておく。
他はあっても覗くか、石でも投げ入れるか……だが俺にしたらどれもこれも甘っちょろい。水飴に砂糖を練り込んだくらいに甘っちょろい。ちょろちょろだ。
まったく……。
穴があったら落とし穴にするだろうがよぉ! 普通!
そう、何を隠そう実はわたくし三度の飯より罠が好きなのだ。そりゃあもう学校に仕掛けすぎて親を呼ばれるくらい。
流石に校長室に釣竿を使った簡単な罠を仕掛けヅラをフィッシングしたのはやり過ぎたらしい。今日も担任に怒られちまったぜ。あんたも爆笑してただろ……。理不尽だ。
っと、話題がずれた。ヅラだけに。げふん。
つまり俺はあのマンホールを落とし穴にしたいんですが構いませんねっ、という状態なのだ。簡潔にいうと。
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