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「おい」
優助がそう声をかけても、二人は全く気付かずに話し続けた。
「おい、あんたらに話しかけてんだよ」
その声は静かながらも怒りが混じっていた。そこでやっと声に気付いたのか、女の方がきつい目で優助を睨んだ。その少し後に、男の方が、女の視線が自分の方に向けられていないことに気付き、優助の方を向いた。
「あ?なんだよ、お前?」
「うるさいんだよ。迷惑だ」
優助はそう告げると、そのまま自分がいた席へ戻ろうとした。しかし男はそれを制止した。
「おい、待てよ!てめぇ、カッコつけてんじゃねえよ!」
優助は男の言葉に立ち止まり、振り返った。そして、
「うるさい」
そう一言だけ告げ、また自分の席へと向かった。その冷静な態度が癪に触ったのようだった。
「何あいつ!マジムカつく!健次、やっちゃってよ!」
女がヒステリックな声をあげると、男は頷いて立ち上がり、指をバキバキと鳴らしながら優助に近づいてきた。
「次の駅で降りろや」
男はそう告げると、逃がさない、とでも言いたげに優助の前に立ち続けた。
おいおい、今時それはないだろ。
と思いつつ、優助は次の駅でカップルとともに降りた。
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