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男女は電車を降りると、優助を強引に人気の無い路地へと連れていった。
「で、どうするわけ?」
優助は至って冷静に聞いた。
「あ?もう調子にのった口きけねぇようにしてやるんだよ!」
男は完全に冷静さを失った様子で拳を握りしめ、女はその様子をニヤニヤしながら見ていた。
「そうか。じゃあ、あんたら有罪だ」
優助はそう言いながらあるものを取りだし、二人に見せた。優助が取り出したものを見た途端、女の顔からは笑みが消えた。優助が取り出したものは、自身が断罪人であることを示す唯一のものである手帳だった。
「だ、断罪人……!」
そうつぶやくと同時に、女は後ずさった。酔いも一気に醒めたようだ。その半面、男は意外にも冷静だった。
「はっ。こんな若くて細いやつが、断罪人なわけねぇだろ!」
男は手帳が偽物だと信じきっていて、見破ってやった、といわんばかりに優助を見た。しかし優助は全く気にもとめなかった。
「ま、別に信じなくても関係ないけどね。すみませーん。お願いしまーす」
優助が叫ぶと、路地の両側から数名の男が歩いてきた。よく見ると、それはさっきの電車に乗っていた男達だった。
断罪人には、一人につき数人の断罪補助者がつく。断罪補助者の役割は、断罪人の身を守ったり、裁きを補助したりすることだ。
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