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その二人、別離る。
彼女が何をしたと言うのだ
「っ…くそ、!!」
侍の時代も終わりへと近づいていた
幕末の世を
若き侍は走っていた
愛する人を
助けるために
「はぁ、…はぁっ、!!」
彼がその場へ着いたとき
彼女はいつもの派手な服ではなく
真っ白な服を着ていた
「…言い残す事は無いか」
浅葱色の羽織を揺らし
男は問う
「そうねぇ…出来れば愛する人と共に散りたかったわ」
「……」
周りの男たちは黙りこんだ
彼女は分かっていた
この言葉がどんなに残酷かことか
分かっていながら祈るように囁いた
「躊躇はしないでね、斎藤さん」
彼女は俯き
そして願った
幸せな世を
来世で彼と再び
出逢えることを
「――――ッ波!!」
そんな、絶え間なく
人が血を流す時代も過ぎ
時は平成
見せかけの平温な世となった
今
彼らは再び出逢うこととなる
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