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夕暮れ、薄暗い廊下。
それはいつもの学校の廊下とは思えないほど異質な空間に思えた。
何かに怯えるように、1人の女子生徒が帰宅を急いでいた。
――急がなきゃ
女子生徒は震える足で廊下を駆ける。
…急がないと。
アイツが、やってくる。
そう思った途端だった。
耳元に生暖かい息が吹きかかる。
「……ひっ」
見つかった!
クスクス……クスクス……。
耳障りな笑い声。
(……ろし)
「嫌ぁあああああ!」
耳を塞ぎ、うずくまる。
聞きたくない、聞きたくない。
(……人殺し)
「違う、違う!私のせいじゃない!」
涙を流すと、それをクスクスと嘲笑うような笑い声が聞こえた。
(嘘吐き)
「違う!」
(嘘吐き、嘘吐き、嘘吐き……)
「……違っ」
(いいえ。貴女は嘘吐き……嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き!)
嘘。
廊下に響くその言葉。
「違……違う……」
女子生徒は放心したように倒れこんだ。
声はクスクス笑い女子生徒に優しく語りかける。
それはどこかへ引きずりこもうとする、そんな声。
(……大丈夫、すぐ楽になる)
無の海に溺れ、息ができなくなって。
女子生徒は目を瞑った。
次の瞬間、響く断末魔。
声は、満足気に笑った。
……人よ、帰れ。
(無の海へ)
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