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「あのさ、慎二って今大変だよね?」
「……ハァ?」
突拍子もない言葉に呆然とする俺。
突然何を言いだすんだ、こいつは。
「だからさ、ご両親も居なくて妹さんもさ……」
……そういえばこいつには家の事情話したことあったな。両親はともかく妹のことまで知ってるのは数人だ。
まぁしつこく聞かれたから話したんだけど。
「だからさ、何か手伝って欲しいこととか、話したいことあったらさ、遠慮せず話してよ」
「……」
はにかんだ笑顔の純子。
対して俺は怪訝な顔を露骨にしてしまった。
……え、何コイツ。突然どうしたのコイツ。気持ち悪い。
「何故お前に」
変なモノを見る目をする俺に、純子は慌てて答えた。
「えっだって……ほら、私クラス委員だし!委員長だし!」
「え……うんソウダネ」
確かに純子は委員長様だ。しかし、だから何だ。何故突然そんなことを言い出した。
純子はごほん、と咳払いをした。
「ずっと言おうと思ってたのこの言葉。まぁ、だから何ていうか……委員長をドーッンと頼りなさい!」
「……ハァ。うん、わかった。まぁ両耳にピアスつけてるヤツを委員長だとは認めたくないんだけどな、個人的に」
純子はパッと見で優等生には見えないビジュアルだ。
前下がりボブの茶色の髪、制服のリボンは周りより大きく派手な赤。
そして両耳にキラリと光るピアス。
彼女は人は見かけで決まらないということを体現している。
しかし自覚が無いのか純子は怒って反論してきた。
「このくらい普通でしょ!とにかく、言いたいのはそれだけだから。じゃ、アンタも早く帰りなさいよ」
「……はーい」
「約束!」
「…………はい」
仕方なしにそう答える。純子は尚も満足してないようだが、ようやく教室を出て行ってくれた。
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