25人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
中学時代の勉強の甲斐あって、なんとか地元の進学校に合格し、晴れて入学式を終えて一週間。
見知らぬ者同士ばかりの教室内は、まだまだ様子見の感はあったけれど、みんなの緊張はそれなりに解けてきていた。
そんな頃。
一年生全員が詰めに詰めてようやく入り切れるほどの広さの講堂に押し込まれると、いよいよ部活動紹介が始まった。
西裏高校は、県内で指折りの進学校だ。
けれど同時に校風が自由なところでも知られている。
例えば、学校指定のジャージがない、とか。
休み時間ならお菓子を食べるのは可、とか。
制服はあるものの鞄や靴、髪型自由、とか。(ただし、やりすぎは不可)
勉強をきっちりやって、羽目を外しすぎない限りは大抵のことは咎められない。
(しかし外しすぎてしまったときの大惨事たるやいわずもがな)
そんな自由な校風を反映してか、運動部から文化部まで、同好会も含めると、西高には30程の部活動があった。
部活紹介の順番は、クジか何かで決めたらしい。
運動部と文化部の発表が、一切の脈絡なく続いた。
開始から小一時間ほど経って、バスケ部が全員で頭を下げて、退場した。
配られたプリントを見て見ると、バスケ部の次、トリは吹奏楽部が行うことになっていた。
西裏高校の吹奏楽部は、全国大会にもしばしば出場し、地元では結構有名である。
もしかしたら、簡単な曲なら聞けるかもしれない、と、わたしは最後の発表を密かに楽しみにしていた。
しかし。
吹奏楽部の紹介は、理由もなく、突如として、中止になり、わたしの期待はものの見事に裏切られたのだった。
部活動紹介が終わると、今度は追い立てられるようにして小さな講堂を後にし、教室へと戻った。
その途中。
何か楽器の音色が聞こえた、ような気がした。
最初のコメントを投稿しよう!