第一部 一話 九牛一毛

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東京都伊豆諸島──そこに浮かぶ小さな孤島があった。名前は【亜帋島<アガミトウ>】と言う。 人口は約三十人弱で、交通手段は船だけである。 そこから少し離れた所に島があり、【亜帋島】の中学生達はそこにある中学校に通っている。 猛暑厳しい夏、彼らは神社にいた。 木の下には四人の影が伸びていた。 「今年の夏祭りは、色んなところから人が来るらしいね」 眼鏡をかけた158㎝の男の子──敷崎 御春<シカザキ ミハル>は、言った。 それに反応するかのように、残りの影の主は答えた。 「だな。嫌だなー」と、三好。 「うん…」と、敷崎 希春<キハル>。 「ふーん」と、九澄 神無<クズミ カンナ>。 暑い日差しが体力を奪ってゆく。彼らは、涼しい所を求める訳ではなく、ただそこにいた。 神社には夏祭りを宣伝する旗が飾ってあった。 島は祭りを楽しみにしていた。 でも、彼らは夏祭りを楽しみにしては、いなかった。
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