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村の人たちがグレーテルを追ってここにやってきたのは、かまどの扉を叩く音がしなくなってからだった。
鬼のような形相で『グレーテルは何処だ』と詰め寄る村の人に、僕は目でグレーテルの居場所を教えた。
言葉はいらなかった。
燃え立つかまどと肉を焦がしたときのような悪臭が、すべてを物語っていた。
僕はかまどの前に独り残された。
村の人たちはみんな帰っていった。
当初のグレーテルを殺すという目的が果たされたからなのか、魔女を殺すという行為に恐怖を感じたからなのかはわからないけれど。
しかし、そのどちらだったとしても、僕が罪に問われることはない。
なぜなら、僕が殺したのは魔女だったんだから。
魔女は殺しても、罪にはならない。
グレーテルが魔女だったということは、村の誰もが知っていることなのだから。
だから、僕に罪はない。
グレーテルの言葉を借りるのなら、僕は『ただ魔女を退治しただけ』なのだから。
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