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僕はかまどの前にしゃがみ込んだ。
ようやくグレーテルの影から抜け出せたというのに、喜びも悲しみも感じなかった。
ただ解放感だけが僕の心を占めている。
僕は勝ったのだ。
グレーテルに。
あの魔女に。
僕は今、どんな表情をしているのだろう?
笑っているのだろうか?
それとも泣いて……?
自分でもよくはわからない。
ただわかっていることは、魔女は確かに存在するってこと。
この世界にではなく、それぞれの心の中に。
そう。
僕の心の中にも……。
グレーテル、僕はようやく自分の考えを自分の言葉で伝えることができるよ。
「さよなら、グレーテル。…………僕の、妹」
END.
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