裏…

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 零れんばかりの大きな瞳にはいつも意味ありげな憂いを湛え、その小さな顔を縁取る、絹糸のような艶やかな髪。肌は、誰かに踏み荒らされる前の新雪のようで、その笑顔は見る者全てを心蕩かすものでございました。  そう、そして義妹と会う人全てに、母とその義妹の血縁関係がまるでないことを悟らせるのには十分でございました。    しかし、何よりあたくしや妹をいらだたせたのは、時折思い出したように家に帰ってくる義父の存在でございました。多分に女としての性に目覚める時分であった義妹を、義父はあたくしたちの面前で常に膝の上に乗せていたのでございます。  彼女を、通り一遍の父親がするソレとは思えないような仕草で抱き上げる父に、嫉妬と、そして見てはならないものを面前に突きつけられる罪悪感といった、よく分からない感情がない交ぜになって。    ……あたくしたちはいつも眉をひそめてその光景から顔を背けたものでございました。そのような時、義妹はいつも決まって義父の膝の上で、その薔薇色の唇を艶然と歪めて微笑み、勝ち誇ったような眼差しをあたくしたち姉妹に向けたものでございます。 .
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