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このものがたりの舞台である帝国は、まわりの国を吸収して大きくなった国だ。三年前にも隣国の紅国と戦争し、強い戦力と様々な手によって勝利した。
国民のほとんどが吸収された国の出身または混血で、恨みを持つもの逹によるテロが多く、そんなテロから国民を守るために自警団という団体が作られた。
★☆
そんな自警団に所属する九神敏朗(クガミトシロウ)は、背の高い茶髪に青い瞳を持った少年だ。昨夜起きたテロの後片付けによる疲れから始業式で寝てしまい、職員室に呼び出されていたのだ。今は夕陽に向かって帰宅している。
「午前中で帰れる筈だったのに…。自警団の仕事で疲れてたなんて言えないしな」
自警団は出来るだけ正体をあかしてはいけないという決まりがある。 国民を守る以外に、軍を影からサポートする役割もあるからだ。
敏朗が公園を横切ろうとした時、公園の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
目を向けてみるとそこには同じクラスの神谷黒刃(カミヤコクジン)が、桜の木の下で動物逹に囲まれて、何か話している。
神谷黒刃は、黒髪黒目で赤いフレームの眼鏡をかけている。左耳についているピアスが目を引く小柄な少年だ。前髪が長いせいか暗いイメージがある。けっこう誰とでもすぐに仲良くなる敏朗でもあまり話をしたことがないクラスメートだ。だが、誰もいない桜の花びらの舞う公園で、夕日に照らされている黒刃は暗いイメージなどなく、とても綺麗だ。
制服のままだから学校が終わってからずっとここにいたのだろうか?
そんな事を考えていると、黒刃は公園の時計を見て急に慌てだし、動物逹と別れると走りだした。
だが、その方向には治安の悪い地域しかない。敏朗は黒刃の後を追った。
★☆
しかし自警団で鍛えている敏朗よりも、黒刃の方が足が速くかなり引き離された。
しばらく追っていくと、前方で男逹と黒刃が言い争っているのが見えた。
「離して下さい!!急いでるんです。早くしないとっ」
「どうせ帰ったって、手伝いだろ?なら一緒にどっか遊びに行こうぜ?」
…男にナンパされていた。
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