ものがたりのはじまり

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「さっきはゴメンね。俺は若林寛大(ワカバヤシカンタ)。この店のマスターだ。」 彼は背が高く、肩まである黒髪を後ろで縛っている。耳に沢山つけているピアスが目立つ青年だ。 マスターが何か飲み物を…と言って、黒刃が手伝おうとすると、「黒はお客様のお相手をお願いします」と奥の方に入っていった。 「なあ、黒刃って呼んでいか?俺のことも敏朗って呼んでいいからさ!」 「敏…朗君?」 「呼び捨てはまだ早いか?」 「…頑張る」 「顔真っ赤にして可愛いなぁ」 「僕、男っ!」 「前髪切ったらよく顔が見えるのに。そっちの方が似合うと思うよ?」 「…そうかな?」 「そろそろいいですか?」 二人がカウンターの方を向くと、苦笑いをしているマスターがいた。 「聞いているこっちが恥ずかしくなるような会話でしたよ?」 その後ジュースとお菓子を少し食べ、敏朗は帰っていった。 ★☆ 次の日学校へ行くと、敏郎の席のそばに黒刃がいた。 「これ、昨日のお礼にと思って作ってきたんだ。」 「お、ありがとうな!紅葉の形してるクッキーだ。…うまい!!」 「俺にもくれよ。…うまい!お袋の作るクッキーよりうまい!」 黒刃は照れくさそうに小さな声でありがとうと言った。敏郎のそばにいた友人たちも黒刃といくつか言葉を交わし、“少し暗い奴”から“料理の上手な可愛い奴”へと考え方が変わった。image=381016413.jpg
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